7、敵中突破

  3名だけで敵陣の中をさ迷うこと4〜5日。幸い小隊長は磁石を持っていたので、南の方向を目指して脱出を図った。いつものように、日の出とともに飛行機からの銃爆撃が始まり、砲撃が始まる。その音は私たちのいる位置より東南方向の、かなり遠い所から聞こえてきた。ということは日本軍もその位置にいるということだから、私たちは爆撃の音のする方向を目指せばよかった。

その頃、小隊長はマラリア熱に冒されてしまい、茂みの中で休息する時間が長くなった。これはマラリア蚊に刺されて発熱する。高熱で体が震えてくるが、しばらく休んで自然に熱がひくのを待つしかなかった。

とある河の河岸を歩いていると、向う岸に3〜4名のインド兵がいるのを見つけた。射撃すれば命中する距離だったが、発砲すればこちらの所在が敵にわかってしまうのでそのまま静かに立ち去った。

しばらく進むと大きな建物があった。遠くから観察したが人の気配はしないので中に入ってみると、どうも様子から日本軍の兵舎跡らしい。真新しい木箱の梱包がいくつも積んだままだ。こじ開けて中身を調べてみると、新しい銃や被服、食糧までもあるではないか。これ幸いに、まず帽子から靴まで、身に着けているもの全てを着替えた。過日、胸まで浸かって渡河したままだったので、とてもさっぱりとした。同じく銃や軍刀も水に浸かって錆付いていたので交換したり、乾パンなどの携帯食糧も補充することができた。おそらく貨物廠かなにかの部隊跡と思われるが、全てを置き去りにして撤退せざるを得ない状況だったのだろう。


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